医療情報管理室長(兼) 岩部 富夫(副院長)

 電子カルテを巻き込んだ事故(ランサムウェアウィルスによるシステム攻撃)調査の結果、電子カルテに内在する大きな問題が最近よく指摘されています。厚労省もこの事例を受けて中小病院の医療情報管理の重要性に警鐘を鳴らし、対策を取るように指導しています。

 私たちの管理室でもこのニュースや情報を収集し、院内に向けての注意喚起を含めた職員教育、情報セキュリティ監査を自主的に受けるなどの対策に取り組んでいます。様々な分野でインターネット社会となり、電子カルテシステム(部門システムを含む)のメンテナンスに外部インターネット接続は欠かせないツールとなっていることを多くの方にご理解いただき、リスクを低減させる安全管理が重要となっています。

 当院は2008年4月から各部門システムを統合していく形で順次電子カルテを導入しましたが、今年度3回目の電子カルテ更新を迎えます。更新導入に当たっては大きく業務を変えるべき点も生じてくると思われます。多くの皆様のご協力が必要となって参ります。紙面を借りましてよろしくお願いいたします。

 今のシステム端末はWindows8.1で動いているという状況です。古いシステムはその安全性に対しても脆弱であり、ハードウェアの更新を含めてシステムは時代の変化に対応する必要があります。これらにどれだけの予算を掛けられるかは機構本部を含む組織内財務担当者の理解が重要です。これまでは「収益にならない」と言われてきましたが、昨今の事情を顧み「こちらが成り立たなければ収益どころではありませんよ」「投資とみなしてください」と訴えながら協力をお願いしています。

 院内の医療情報システムは大きく2つの領域に区分されます。一つは診療録をはじめとする様々な業務系システムです。もう一つはインターネットに直接接続する情報系システムです。業務系では安全確実な管理が法的にも求められており、患者プライバシーの確保や情報セキュリティの維持継続が重要です。一方で地域連携においては効率よい診療支援が求められており、当院では利便性とセキュリティのバランスを損なわない運用と改善に日々取り組んでいます。具体的には県周産期ネットワークシステム利用やおしどりネットでの情報提供病院としての参加、鳥取県西部地区医療機関Web予約システムへの参加が検討されています。

 この業務系システムと次に述べる情報系の中間ともいえるインターネットを利用した業務連絡システムが近年注目されています。これは業務系で使用される患者情報をどのようなツールを利用すれば個人情報を配慮してインターネットで取り扱えられるかという点で総務省から見解も出されています。当院では2022年5月に「院内業務に関わるSNS利用規程」を定め、秩序ある利用を進めて、職員間の情報共有に対応していく方針となりました。

 もう一つのシステムである業務系システムではセキュリティの向上のため、端末の一元管理やウイルス対策および異常動作の監視などを行っています。また、2021年12月より機構本部によるインターネット一元化計画に沿って、よりセキュアな環境を整備しています。新棟においては患者サービスの一環として無線でのWi-Fi環境を提供していますが、こちらも安全で繋がりやすい環境を維持するためSNS認証を取り入れています。一般的にセキュリティと利便性はトレードオフの関係にあり、利用対象者・回線密度など考慮しながらいかにバランスを取るのかが重要な判断とされます。簡単に接続できるけれど混雑して使えないと安全に利用できない公衆Wi-Fi環境はサービスに値しないと考えているからです。

 このように医療情報管理室は電子カルテシステムの運用管理・メンテナンスを行うとともに、ネットワークの整備・運用、院外への広報・管理といった院内のあらゆる情報システムツールの技術支援を行う部署として、病院の底支えを担っております。しかしながら、医療分野での情報利用環境はまだまだ立ち遅れています。その理由は様々ですが、医療界独特の多様性(非標準化)意識、利用者と技術者をつなぐ人材不足、一般社会での認知不足などが指摘されています。昨今デジタルトランスフォーメーションやSociety 5.0といって未来志向の宣伝文句が花盛りですが、そうした形に至るには利用者主体の目線で情報提供することが必要です。

 こうした思いで、地に足の着いた医療情報を目指して現地・現物・現実に即した環境を院内外で構築できるよう、支援スタッフと共に日々活動をしています。日ごろからご協力いただいている皆様への感謝とともに、今後も皆様方のご支援をよろしくお願いいたします。